ブレンドの設計は、初めに提供する焙煎度を決め、次に使用する豆を決めます。豆の魅力をより強調し、日常使いの豆を作る事を思い描きながら設計図を作ります。
ネパール ラマ・オーガニック農園。この豆の特徴は、豊かな麦芽糖のような甘みがあり、アフターは尾を引かずスッと消える上品さにあります。深く焼いてもこの特徴が消えない点に着目しました。甘みを感じるということは、実はすごいことなんです。だってコーヒーノキの種を焼いてお湯に浸してるだけなんですよ。それで甘みが少しでも感じられるコーヒー豆があるならばそれだけですごいこと。ブレンドにはエチオピアの柔らかな酸をあえて加えて深みを出し、ネパールと同系統のメキシコを少し遅れて走らせます。
数週間に及ぶ試作の結果、ティッカ(中煎り)デレィ(深煎り)の2種類の焙煎度で共有でき、どちらも美味しいブレンドに仕上がりました。
アムダマインズ小林さんにネーミングを依頼。ティッカはネパール語で「中くらい」の意。デレィは同じくネパール語で「とっても」の意。岡山弁で「とっても」って言うのは「でーれぇ」って言うじゃない?デレィと重なるよね覚えやすいかもねって。笑った。(ダジャレヒントじゃないですかそれ。)そうだった、小林さんは実家も岡山です。
仕上がったブレンドレシピで焙煎します。豆がふっくらふくらみ、小粒なエチオピアとのコントラストが美しい。もやがかかったような軽やかなすべり出しから、すっきりした甘みに繋がっていく。ネパールの夕暮れ。ひんやりしてきた空気を鳥がよこぎりヤギの鳴き声が聞こえてきます。
2023年3月31日。平林金属創業者、平林久一が逝去しました。4月26日岡山プラザホテルでとり行われた献花式には、故人との名残りを惜しむ大勢の方々が見えられました。コーヒーを供するため平林金属、ヒラキン、えこ便スタッフの混成でコーヒーチームが組まれます。ネパールコーヒーのデビューです。当日は2部構成。短時間に1000名を越える集中が予想されるため、準備のための打ち合わせが緊張感を持って繰り返されました。ブレンドネパール・ティッカはこの日、宮元さんと中村さん、えこ便局長2名のオペレーションによりホットとアイスあわせ、1,531杯におよぶ杯数が滞ることなく無事に供出されました。
式場内には麻袋(マタイと読みます)に入った現物をディスプレイ。ネパールのコーヒーはいかがですかとお声がけをしながら、カップを参列された方々に手渡ししました。栽培→輸送→焙煎→抽出。”栽培からカップに至るまで”(From seed to cup)の思いが繋がった特別な1日になりました。
ネパールと平林金属には以前にも接点がありました。2008年のブログ記事です。「ネパールに野球を ネパールに笑顔を」という見出しで始まるそのブログは、主がおそらく監督で、監督の妹さんが所属する平林ソフトボールクラブからネパールのJrチームにユニフォームが寄贈されたことを大変喜んで伝えています。初めてのユニフォームを着て試合をしている子供たちの写真がとても嬉しそうでとても真剣で。これって自分の付けていた背番号を、つい写真で探してしまいますよね。