ラマ・オーガニック農園。

これはビルドスさんの自宅の写真なんですが、なんとも美しいでしょう。油絵のようなんです。

自宅のすぐ目の前に自作のウエットミルプロセスの加工場があり、その下側がコーヒー農園です。家の窓を開けるとコーヒーの実がなっている。コーヒーやってる人間にとっては最高に羨ましい環境です。ここからちぎってきた赤いコーヒーチェリーの実をパルパ―という機械でパルピング(チェリーのかわを剥く工程)し、次にバケツの中で水を入れずに発酵させます。その度合いで香りが変わります。温度と時間で風味が変わるんです。それを今ビルドスさんは◯◯秘密時間で実験中です。発酵実験ができているんです。色々実験を繰り返し、それを乾かしてパーチメントという殻付きの状態にし、袋詰め。ここまでが「ウェットミル」というコーヒー豆の栽培の半分の工程です。

ここまで一つの農園で完結されるべきなのですが、ビルドスさんはこれができていて、完成されている状態です。ビルドスさんが最近焙煎に興味が出てきてと言われるのを聞いて、ですよねって思いました。

ビルドスさん自身の望みっていうのは、自分の豆が自分の名前で世に出て、飲まれ、評価されることです。それが彼の喜びです。ビルドスさんは奥さんと二人でやっています。実験しながら、ああでもないこうでもないと新しいことに取り組んでいるんです。

この人とても変わっている人で、ネパールで有名人なんです。23年くらい前に、生計向上支援という形で、スイスの団体が新たな作物を収穫してはどうかとコーヒーの苗木をこの地域に配ったんです。ネパールの人はみんな真面目なのでそれを植えて育てましたが、そこから先どうしたらいいかの指導はなく、コーヒーも飲んだこともないしどこかで買ってくれる話もない。海外に持っていく方法もわからない…とみんなバカらしいって言って、木を切り倒しちゃったんです。ビルドスさんは、それでもずっと育てました。彼は、10代のころに出稼ぎで行った南インドでコーヒーを飲んだことがあって、とても美味しかったんだそうです。それで、変人といわれながらも頑張ってコーヒー栽培をしてきて、今それがつながり、実になって、ビルドスさんのおかげで生活を支えられる人たちがいます。

彼自身が育てているのは約500本、それを増やすつもりはなく、そのかわり苗木を1万本くらい育てて、近辺で生活に困っている人や自立できない農家、とうもろこしなどの農家に差し上げて、今まで彼が一所懸命にやってきた栽培方法、ノウハウを無償で提供しているんです。栽培農家をまわりに増やしていって、自分たちの家族だけじゃなく、みんなの家族が一緒に暮らせるようにしたいと思っています。

そうやって大事に思って育てたものは、その思いがなにかそれに宿ると思います。それを感じる人が口に入れると、大事にされてるその思いも伝わるのではないかと考えています。虐げられ、強制労働で作らされたコーヒーと、大切にされたコーヒーはきっと違うと思います。その作り手の思いを繋いでいくのがうちの仕事です。

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