これはアムダマインズという国際協力NGOの小林麻衣子さんがずっとされてきたことから続いていることです。
アムダマインズが、この地域の生活環境の向上を目的としたプロジェクトを2014年に開始して、詳細調査を行って、活動計画を立て、さあこれから支援を始めよう!というところで、2015年4月の大地震が発生し、9割の家屋が損壊・倒壊してしまいました。現地のおばあちゃんたちが家を失って途方に暮れているところに小林さんはとどまり、一緒に寝食を共にしました。他のスタッフと雑魚寝で一ヵ月くらい泊まり、川の水で沐浴しました。被災したこの地域の人たちの暮らしを復興するために何をしたらよいのか、地域の人たちと一緒に考えたんです。
その時なにを考えたかというと、これまでと同じようにトウモロコシや豆などの自給作物を育てても、暮らしは良くならない。市場で売ることに焦点を当てて、ブロッコリーやトマト、キュウリなど新しい換金作物の栽培に取り組もう。
活動を通じて、集落ごとに農業グループができ、集落で栽培した作物を市場に売って収益をあげる経験を積むことができました。でも、いくつかのグループから、「もっと換金性が高い作物を作って、農業でしっかり暮らしを立てていきたい」という声がでて、何ができるかみんなで話し合ったり、他の地域にあるコーヒー農園を視察に行ったりして、コーヒーをやろう、そう考えたんです。プロジェクトの最終年に、アムダマインズが約1,000本のコーヒーの苗を支援して、その後、村の人たちが自分たちで資金を出し合って、ある集落をコーヒー農園として企業化しました。それが、水牛の購入をサポートした「クンダンさんの農園(レンブワ農園)」です。
小林さんは、震災からの復興を共に歩んできたこの地域と人たちに思い入れがあって、プロジェクトが終わっても、プロジェクトで力をつけた村の人たちの自立と、継続した生活の安定に関わり続けていきたいと思っていました。外務省からの資金も使った5年半のプロジェクトは、2019年におわりました。非営利団体であるNGOが一定規模の活動を継続するには、国の資金(ODA)を含めた助成金や補助金への申請が欠かせません。でも、そうした資金では、同じ地域で長期間事業を続けるのは難しいのです。小林さんは、ネパール国内でNGOとしての活動を他の地域で実施しながら、クンダンさんのコーヒー農園に寄り添い、いつの日かネパールのコーヒーが世界から認められることを願っています。